そもそも、成膜加工とはどのようなものなのでしょうか。成膜と薄膜の違い、成膜に用いられる装置の種類、成膜加工の一般的な流れなど、成膜加工について知っておきたい基礎知識をまとめています。
成膜加工を依頼する際には、自社に合った成膜加工会社選びが重要になります。
このサイトでは自社に合った成膜加工会社を探すことができます。ぜひ理想の製品に成膜してくれる会社を見つけてください。
成膜加工と薄膜加工の違いについて解説しています。成膜と薄膜は、違う種類のものを指すのではなく、薄膜は基材や基板の表面に施す薄い膜のことを指し、成膜は薄膜を形成することを意味します。
成膜することで、その製品の表面が保護されたり、電気を通したり、熱をコントロールしたり、汚れや水を防いだりと、さまざまな機能を有することができます。
成膜にはいくつかの方法があります。真空状態の中で行われる真空蒸着とスパッタリング、高真空状態を必要としないCVDなどが、代表的な成膜方法です。
成膜加工装置には、いくつかの種類があり、成膜加工会社によって保有している装置が異なります。
バッチ式は、タンク状の装置内でドラムやドームを回転させて成膜する方法で、さまざまな形状の基板に対応することができます。
インライン式は、搬送装置に基板材料を載せて、流れるように成膜していく方法です。板状・シート状の基板材料を大量に成膜していくのに最適です。自動でできるプロセスが多いので、省人化も可能です。
ロールtoロール式は、ロール状に巻いた材料に成膜する方法。ロール状の材料を真空中で巻き出して成膜し、再びロール状に巻き取っていきます。
円筒内面式は、円筒状の基板材料の内面に成膜する方法。小型から大型までサイズがあり、少量から多量に対応しますが、この装置を保有している企業はそれほど多くないようです。
成膜加工は、基板材料のチェックから始まります。傷や欠損がないかを確認し、生産ラインに不良品が混入しないようにします。
その後、基板材料の表面についた汚れを取り除く精密洗浄を行い、基板材料に薄膜を形成していきます。基板材料のサイズや形状、材質に合わせて加工装置を使い分け、最適な方法で成膜していきます。
成膜後は、人の目や手、機械を使って検品を行います。製品によっては、わずかな傷やムラでも性能に影響を及ぼすことがあるため、入念な検査が求められます。
このほか、また、温湿度サイクル試験、耐熱試験、耐湿試験、耐薬品性試験などを行い、温度や湿度などの変化にどの程度耐えられるか、そうした変化によって品質は損なわれないか、出来上がった製品の信頼性や耐久性などの検査を行います。
成膜加工では、基板にコーティングを行う材料に金属やガラス、シリコンなどが用いられています。金属には汎用性の高いアルミニウム(Al)をはじめ、豊富な種類の単金属から、合金や複合酸化物、炭化物も使用されています。
成膜加工では基板にもいくつかの種類があり、膜の材料を替えながら組み合わせることが可能です。非粘着性や耐摩耗性を獲得するためには樹脂やシリコンが用いられ、シリコンには耐熱・絶縁・耐圧といった特性も持ち合わせているため、摩耗や熱による破損を避けたい対象物に適しています。
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)は、ダイヤモンドと黒鉛の中間的な位置づけの材料として成膜に利用されています。ダイヤモンドの硬質な特性に加えて、耐摩耗性と潤滑性にもすぐれているため、切削工具や医療器具といった精密な作業を行う対象物への成膜に用いられます。
成膜加工を行った対象物には、「アニール処理」と呼ばれる熱処理を加えて加工品の変形を防ぐ場合があります。アニール処理にはバッチ式と枚葉式の2種類が存在し、成膜後の加工品のコーティングを強固に密着させられます。
アニール処理を加えると、密着性の向上に加えて残留応力と呼ばれる力を取り除き、加工品に発生する歪み・割れなどの破損を予防できます。形状を破損させずに安定させられるため、加工品の素材によっては熱による処理が必要になります。
アニール処理を金属素材に施す方法は、日本語で「焼きなまし」という呼び方で知られています。熱処理は加熱時の温度調節や対象物にあわせたアニール処理機器が必要であるため、一定の品質を求める場合は成膜加工と成膜後の熱処理を一貫して対応できる、実績豊富な会社に依頼を行うことが大切です。
成膜加工を施す際、薄膜の材料にはさまざまな金属が使われています。その中でも銅(Cu)は配線などの製品に多く用いられ、パターニング加工も施される素材です。
銅の成膜加工には、電解メッキ・無電解メッキ・スパッタリング・蒸着という4つの方法が採用されています。化学反応エネルギーや電気による金属イオンの還元を使って成膜が行われますが、対象物の形状にあわせた成膜加工方法を選ぶ必要があります。
成膜加工を行った後は、回路などのパターンを作り出す「パターニング加工」が行われることがあります。回路・素子といった目的に応じたパターンを図面に起こし、その図に沿ってパターンを対象物の表面に形成します。
成膜を行い、その後でパターニング加工を実施するため、一定の品質を求める場合には一貫して対応できる会社に依頼を行いましょう。
成膜加工では、ピンホールが発生します。ピンホールのサイズは見ただけですぐにわかるものから、拡大しないと見つけられないものまで、さまざまです。作業時の環境や加工方法などが影響して、ピンホールは発生します。
ゼロにするのは難しいですが、成膜加工を行う会社では、できる限りピンホールが発生しないように工夫を行っています。作業環境を見直して清潔な状態を確保する、こまめにメンテナンスを行う、導入する機械を見直すなど、さまざまな対処法があります。
ピンホールがあっても小さなものであれば問題ない、という製品もあれば、小さなピンホール1個であってもNGになってしまう、という製品もあるはずです。自社でどの程度までピンホールを許容できるかを決めたうえで、加工会社に依頼する際にピンホールを発生させないために、どのような対策を行っているかを確認しておくと、不安なく成膜加工が依頼できるでしょう。
スパッタリング法は、物質の表面に皮膜を形成するコーティング技術の1つです。物理蒸着の1つに分類されており、スパッタリング法を用いることで、表面が滑らかに仕上がる・さまざまな材料を使用できるなどのメリットがあります。
またスパッタリング法といっても複数の種類があり、使用する材料やターゲットによっても適したスパッタリング法が異なります。要望通りの成膜加工が行えるように、成膜加工会社を選ぶ際はどのようなスパッタリング法に対応しているかを確認して選びましょう。
単結晶基板上に結晶方位がそろった単結晶の薄膜を成長させる方法を、エピタキシャル成長と呼びます。エピタキシャル成長を用いた成膜加工装置を使用した成膜加工により、高い品質を保ちながらもスピーディーな加工が行えるため、結果として低コスト化にもつながります。
エピタキシャル成長法にも種類があるため、それぞれの方法の特徴を踏まえ、成膜加工を検討しましょう。
「DLC」とは「Diamond-Like Carbon」の略称であり、ダイヤモンドとカーボンの中間的な特徴を兼ね備えた素材を用いたコーティングのことです。鉛筆の芯にも用いられるカーボンの特徴を受け継いで黒色を表しますが、ダイヤモンドのように一部分だけ透過が見られ、カーボンよりも硬度が高いのが特徴と言えます。
DLCの成膜加工方法には主に「PVD法」「PCVD法」「PBII&D法」の3種類があります。PVD法にはさらにアーク・スパッタ・レーザー蒸着法などがあり、DLCの成膜加工方法は豊富です。それぞれの加工方法により特徴が異なるため、DLCの成膜加工を希望しているなら、成膜加工会社を選ぶ前にそれぞれの加工方法の特徴を知っておくことが重要です。
特徴を把握し、自社の目的に沿う加工方法を採用している成膜加工会社を選びましょう。
酸化チタンとは白色度が高く、わたしたちの身近で顔料として広く用いられている物質です。日焼け止めやトナーの添加剤、白色顔料として用いられているほか、ガラスやプラスチックフィルムの膜としても活躍しています。特にフッ素樹脂との混合により素地の美しさを半永久的に維持する効果があり、素地を保護するための膜としても有効です。
酸化チタン膜の成膜加工方法は主に、ドライコーティングである「スパッタリング法」と「MOCVD法」、そしてウェットコーティングの3種類があります。
成膜加工では、「真空成膜装置」が用いられることもあります。真空成膜装置とは容器内を真空状態にして、0.1~数十μmほどの非常に薄い膜を形成するためのものです。真空を扱うため設計上の制約が大きいデメリットがありますが、反射防止や防汚に効果のある、薄い膜を作られることがメリットとなります。
真空成膜装置による成膜はわたしたちの日常で広く利用されており、カメラやメガネの反射防止膜や、スマートフォン・タブレットなどの反射防止膜や防汚層に利用されるものです。また菓子袋の湿気侵入を防ぐための保護膜でもあります。
成膜加工会社選びをするには、成膜加工に関する知識を備えているかどうかがポイントとなります。そのための情報を求められているなら、真空成膜装置についての基本的な情報も得ておくと、より自社に適した成膜加工を目指せるかもしれません。
「真空蒸着」は金属や化合物を真空の状態で加熱蒸発させ、そこで発生した蒸気を物体の表面に対して薄い膜上に形成するといったメッキ加工の方法です。
この技術はさまざまな場面で用いられており、例えばレンズのコーティングや半導体や集積回路、電子部品や高額部品の反射膜といったように、多彩な工業製品の加工に用いられています。
成膜加工会社選びをするには、成膜加工に関する知識を備えているかどうかがポイントとなります。そのための情報を求められているなら、真空蒸着についての基本的な情報も得ておくと、より自社に適した成膜加工を目指せるかもしれません。
成膜加工におけるイオンプレーティング法とは、皮膜の材料を対象物に蒸着させる方法のことです。電子ビームガンやグロー放電により材料のイオン化・蒸発を促して成膜を行います。
基本的に密着度の高い皮膜を作り出せることが特徴ですが、イオンプレーティング法には「Mattox法」「活性化反応蒸着法(ARE法)」「中空陰極放電法(HCD法)」「アーク放電法(AIP法)」と蒸着のプロセスや方法が違う4つの種類があり、種類ごとに仕上がりの特徴は変わってきます。そのため成膜加工会社を選ぶ際には、自社の用途や目的に適したイオンプレーティング法を採用しているところを選びたいものです。
成膜加工会社を選ぶ前に、まずはどのような方法の成膜加工を行っているかを確認してください。イオンプレーティング法の特徴についても知っておきましょう。
CrN(窒化クロム)は、クロミウムナイトライドの略称で、クロム系のスタンダード膜です。密着性や耐食性、金型やネジなどが摩擦熱で過熱されることで、表材表面の変質や摩耗などを防げる耐凝着性に優れているのが特徴。特に油中環境での摩擦係数が低いことから、一般的には、部品同士の接触部分である摺動部品に採用されることが多くなっています。
CrNの成膜加工方法には、中空陰極放電法と呼ばれ、蒸発とイオン化を電子ビームガンで行うHCD法、アーク放電法と呼ばれ、コーティング材の表面でアーク放電を発生させ、蒸発・イオン化を促して成膜をするAIP法などが用いられます。
成膜加工会社によって成膜加工方法は異なります。理想の製品に成膜してくれる会社を選ぶためには、それぞれの成膜加工方法の特徴を押さえておくことが大切です。
TiAlN(窒化チタンアルミ)はチタニウムアルミニウムナイトライドの略称です。TiNにAlを加えることで、耐摩耗性・耐熱性を向上させたコーティングとなっています。耐熱性の高さから、ドライ環境で使用される切削工具へのPVDコーティング膜となっていて、近年ではスタンダード膜として市場に提供されています。
TiAlNの成膜加工方法には、ターゲットをアーク放電により蒸発およびイオン化させて成膜を行うAIP法、プラズマなどにより、高いエネルギーを持った粒子をターゲットに衝突させ、その衝撃で材料成分をたたき出し、粒子を基板の上に膜を堆積させることで膜を形成するスパッタリング法などがあります。
理想の製品に成膜してくれる会社を選ぶためには、それぞれの成膜加工方法の特徴を押さえておくことが大切です。
TiCNは「Titanium Carbon Nitride」の略です。TiNに炭素を添加し、低摩擦特性を加えた硬質複合薄膜で、硬度(HV)は、2,500~3,500と高くなります。膜密着性に加え、耐摩耗・耐食性・耐熱性・低摩擦特性を持つのが大きな特徴です。
刃具や工具のコーティングなどで使われることが多いです。膜厚さはTiN膜と同様で1~5μm程度、TiNは金色ですが、TiCN膜は灰色紫色から黒っぽい色をしています。
TiCNの成膜加工に用いられる方法として、まず物理蒸着法とも呼ばれるPVD法があります。真空条件下において製品に対して硬質の薄膜をつける方法です。他にCVD法と呼ばれる化学蒸着法もあります。
どのような目的の製品を作るのかによっても適した方法が異なるので、よく検討が必要です。TiCNについてだけではなく、成膜加工に用いられる方法別の特徴も確認した上で検討すると良いでしょう。
CVD法とは薄膜の原料をガス状にし、複数のガス同士の相互反応によって皮膜を生成する方法のことをいいます。切削工具の強化膜や、半導体の絶縁体や保護膜などに使われる技術です。
原料ガスを充満させて加工することから、成膜が均一になりやすい特徴を持ちます。
代表的なCVD法の種類は、3種類です。まず、熱CVDは複数のガスを使い、熱平衡反応を利用して膜生成を行う方法です。次にプラズマCVDは反応性ガスをプラズマ状態にしてラジカルやイオンを生成し、化学反応によって薄膜を形成します。
それから、光CVDは、紫外線やレーザー光といったものの光分解作用を利用して塗膜を生成する方法です。
この他にもいくつか種類があるので、CVD法を選択する場合は成膜加工会社を選ぶ際に希望する方法に対応しているかよく確認しておきましょう。気になる成膜加工会社を見つけたら品質も重視してみてください。
コーティングは、ドライコーティングまたはウェットコーティングのどちらかに分類されます。それぞれ特徴が異なるので、依頼する前に良く確認が必要です。
ドライコーティングは、材料表面を気相・溶融状態を用いて処理する方法のことをいいます。機能付与するための物質は、個体のままでコーティングするのが特徴です。
ドライコーティングの中でも、蒸着またはスパッタリングといった種類があります。
ウェットコーティングは、機能付与するための物質を液体化して塗布、乾燥・硬化させる方法です。薄膜から厚膜塗工まで対応できることから、自動車業界や建材、その他広い工業分野で活用されています。
まずは目的の製品にはドライコーティング・ウェットコーティングのどちらが向いているのか判断し、それを得意としている成膜加工会社を探してみると良いでしょう。
TiNとは窒化チタンのことであり、窒化チタンは他の金属コーティングと比較しても古くから行われてきました。高硬度・高密着性・高靭性を持つのが特徴です。そのため、切削工具や工業用部品など、耐久性が求められる部品や箇所に多く使われています。
例えば、金属加工用工具の刃などは使用し続けることによって少しずつ消耗されていきますが、これらを保護して長寿命化することも可能です。
色合いとしては、金色になります。ただ、金メッキ・塗装の金色とは少し色みが異なり、黄色に近いものや茶色に近いものなど、調整が可能です。
HCD法のほか、アークイオンプレーティング法、反応性スパッタ法など、様々な方法で成膜加工されています。成膜加工会社に依頼してTiNの成膜加工を行いたいと考えているのであれば、まずはTiNの成膜加工の詳細について確認しておくと良いでしょう。
成膜には熱酸化法、CVD、ALD、スパッタリングなどの方法がありますが、このうち熱酸化法で用いられているのが熱酸化装置です。特に半導体においては一般的な膜種といえます。
炉内でシリコンウエハーを熱し、そこにガスを送り込んでウエハーの表面を酸化させることによって成膜します。一括して処理することもできます。空気中にシリコンウエハーを放置すると自然酸化膜ができますが、これを行うための装置です。
原料のシリコンウエハー自体が変化する形で膜を作るのが大きな特徴です。そのため、膜になった分のシリコンウエハーは減ります。酸化法には、ドライ酸化・ウェット酸化などの種類があり、使用するガスの種類や形態によって熱酸化方法が変わります。
熱酸化装置を用いた成膜を行おうと考えているのであれば、熱酸化装置に関する基本などを確認しておくのがおすすめです。
ALDは「Atomic Layer Deposition」の頭文字を取ったものであり、2種類以上の原料気体を交互に導入・排気させることで1層ずつ原子層を重ねていく成膜の方法を言います。化学吸着によって単分子膜を形成し、それを重ねていくのが特徴です。
原子層レベルでの精密な薄膜操作ができることから、細かく膜厚を制御しなければならないような場合にも活躍する方法です。半導体や燃料電池、リチウム電池などを、様々な用途で使用されています。
ガスを使って成膜することもあり、CVDの一種と言われることも多いです。ただ、CVDとは異なり、1層ずつ成膜ができます。
ALDによる成膜加工が向いているか判断するためには、ALDがどのような技術なのか確認しておきましょう。極薄の成膜ができるほか、低温での成膜が可能であるなど、多くの特徴を持ち、活躍の場も広いといえます。
スピンコーターと呼ばれる機械を用いて成膜加工を行う方法で、塗布対象物の中心に垂らしたコーティング液を高速回転させることにより、遠心力を発生させて液を拡げ薄膜作ります。
なるべく均一に薄膜を作るためには、ステージの高速回転や温度の維持が重要です。
スピンコーターの多くに、自動で均一に液を垂らす自動滴下や連続運転による温度の上昇を抑える機能がついています。
PZTとは、圧電素子を利用した薄膜加工のことです。製品の小型化や集積化、高精度化などの効果が得られることから、MEMSと呼ばれる電気機器システムに用いられています。
特に代表的なのがスマートフォンです。特定の周波数のみを通すBAWフィルタや音を電気信号に変換するマイクロフォン、動きや位置を計測するジャイロセンサ、加速度センサなど、多くの機能はMEMSのおかげで作動しています。
薄膜技術の一つである「真空成膜(スパッタリング)」とは、光の制御や表面の強化・保護を目的としています。真空成膜の効率化や品質の安定性のため、オーダーでコーティングのために製作した道具を「治具」と呼びます。
真空成膜の品質は、導電性や薄膜の膜厚、パターニング幅などが基準で評価されます。薄膜は基板の表面から剥がれてしまうこともあるため、基板と薄膜に適した材料を選んだり、前洗浄処理を徹底したりといった点に注意しましょう。
クリーンルームとは、空気中に浮遊する微粒子・不純物などを徹底的に排除して衛生面を保つ仕組みのことです。クリーンルームのレベルが高い会社であれば、半導体など対応できる製品も多いといえます。